時系列データのMAモデルとARモデル、その定常性と反転可能性

(2020-08-14)

時系列データにLjung-Box testを行い自己相関があることが分かったら、次はそれをモデルで表現したい。今回は自己相関を表す最も基本的なモデルであるMAモデルとARモデルを見ていく。

Pythonで時系列データを検定(Shapiro-Wilk test, runs test, Ljung-Box test)する - sambaiz-net

MAモデル

q次のMA(Moving Average; 移動平均)モデルMA(q)は次の式で表される。cは定数でθはパラメータ、εは分散σ^2のホワイトノイズ。ホワイトノイズというのは期待値が0でlag=0以外での自己共分散も0である定常過程で、定義から自己相関も0になるので何の傾向もなく動く。期待値が0のiid系列はホワイトノイズであるが、ホワイトノイズがiid系列であるとは限らない。

時系列データの定常性と定常過程、単位根過程 - sambaiz-net

MA(q)の式

過去の項と共通部分εを持つことで自己相関が表されている。したがって共通部分を持たないq次以降の項の自己相関は0になってしまうが、次数を上げるとパラメータθの数が増えてしまう。

期待値Eと自己共分散γ、自己相関ρは次の通りで常に定常性を持つ。

MA(q)の平均と自己共分散、自己相関

ARモデル

p次のAR(Auto Regression; 自己回帰)モデルAR(p)は次の式で表される。cは定数でφはパラメータ、εは分散σ^2のホワイトノイズ。

AR(p)の式

次のAR特性方程式の根(解)の絶対値がすべて1より大きい場合に定常過程となり、1を含む場合は単位根過程となる。したがってφ_1 = 1AR(1)であるランダムウォーク y_t = c + y_{t-1} + ε は単位根過程である。

AR(p)の特性方程式

AR(1)では|φ_1| < 1のとき定常性を持つ。実際|φ_1| >= 1だと平均(|φ_1| = 1, c=0のときを除く)や分散が発散する。

平均が発散しないc=0のランダムウォークは一見定常過程と区別が付きづらいが、 単位根過程同士で相関を取ると見せかけの回帰(spurious regression)という現象によって、それらが全く独立であっても有意な関係を見せてしまう問題があり、Augmented Dickey-Fuller testで単位根が存在するか検定できる。

定常過程の場合、平均Eや自己共分散γ、自己相関ρは次のようになる。自己相関の式はユール・ウォーカー方程式と呼ばれ、lagkが大きくなるにつれて指数的に減衰していく。

定常過程である場合のAR(p)の平均と自己共分散、自己相関

反転可能性

条件を満たすARモデルとMRモデルは相互に変換することができる。変換できることを反転可能(invertible)と呼ぶ。

AR -> MA(∞)

ARモデルは常に定常性を持たないので、無条件に定常性を持つMAモデルにならないことは明らかではあるが、ではどのような場合に反転可能なのかというと、まさにその定常性を持つというのが条件となっている。

MA -> AR(∞)

次のMA特性方程式の解の絶対値がすべて1より大きい場合に反転可能となる。

MA(p)の特性方程式

参考

経済・ファイナンスデータの 計量時系列分析